2024/08/03
これから書くことは、
①これからスタートアップに飛び込むビジネスマン
②すでにスタートアップでキャリアを築き始めているビジネスマン
に伝えたい内容だ。
あなたはスタートアップというエキサイティングな環境で、大企業では経験できないスピードで、多くの職務や企業成長を経験し、より早く成長し、いずれはCxO人材として社会に影響を与えられる逸材になることを望んでいるかもしれない。
しかし、CxOキャリアへの道は、幾度となく関所があり、多くの入場料を支払わなければならない。
もしかしたら、キャリアの半分以上は関所前で、門番と押し問答をして、ようやく入場料を払って関所を通過し、待ち望んでいた大草原を韋駄天のように駆け始めたかと思えば、またすぐに次の関所が現れる。という日々の繰り返しかもしれない。
先日、とあるスタートアップ経営者に「CxOにはどのような経験をしている人材を採用すればよいか?」と質問された。
私は間髪入れずに答えた。
「修羅場を経験し、乗り越えるか、耐え抜いた人が良い」
「当然だが2-3年おきにやってくる真の修羅場のたびに、闘う場所を変えているホッパーは採用してはいけない」
「あと意外に感じるかもしれないが、昇り龍のように上がり続けている人も止めた方が良い」
と答えた。
修羅場(もしくは停滞期)は、人を真に成長させる。
そのとき成長実感はない、ゆえに大半の人は、市場や、会社、社長や、経営方針を理由に闘う場所を変える理由を探す。
しかし、真に組織を率いるCxO人材に必要なのは、成長実感は感じられない苦しい時期を乗り越えた(もしくは耐え抜いた)経験だ。
その経験を何度も乗り越える(もしくは耐え抜いた)経験があると、再び修羅場が訪れたときに「今回もきっと乗り越えられるに違いない」と、経験に基づいて信じ、信じることによって粛々と行動することができるようになるからだ。
では、どうして、修羅場を乗り越えたCxO人材がスタートアップには必要なのか?
スタートアップは基本的に、修羅場(もしくは停滞期)の連続だ。
「スタートアップとは、崖の上からから飛び降りながら、飛行機をつくるようなものだ」とは、LinkedInの創業者 リード・ホフマンの名言だが、まさにその通りだ。
修羅場と書いて、スタートアップとフリガナをふっても良いくらいだ。
洋食レストランには洋食調理経験者が必要で、和食割烹には和食調理経験者が必要なように、修羅場(と書いてスタートアップと読む)には修羅場経験者が必要なのは、当然すぎる節理だ。
逆に言えば、順風満帆ビジネスには、順風満帆経験者が適している。
が、順風満帆のときには、誰がリーダーでも大差はつかないので、ここの議論は世の中に多くない。
しかし、修羅場におけるリーダーシップは、同じ身長・体重・学歴・年齢だとしても、簡単に100倍以上の大差がつく。
話を冒頭に戻そう。
ゆえに、スタートアップというエキサイティングな環境で、大企業では経験できないスピードで、多くの職務や企業成長を経験し、より早く成長し、いずれはCxO人材として社会に影響を与えられる逸材になることを望んでいる貴方にとっては、順風満帆の経験は無価値の経験と言っても過言ではない。
大切なのは、1年に数回訪れる“苦しい時期”と、2-3年に1回訪れる“修羅場”(もしくは2-3年にわたる停滞期)の経験だけだ。
そして、他者より差をつけて成長したいなら、常に修羅場の状況にある部署への異動(もしくは兼務)を、会社に対して希望として声をあげておくのが良いだろう。
その希望は、簡単には認められないかもしれないが、希望を出し続けることと、現職務で成果を出し続けたことで、会社の存続がかかった真の修羅場を迎えるときに、常人には経験できないような超修羅場(例えば現在のビッグモーター社の再建とか)を任せてもらえるかもしれない・
実はこの「入場料」という表現については、ベストセラーとなった「サイコロジー・オブ・マネー」から引用させてもらった。
同書では、投資で利益を得るためには、ときに(そのほとんどは当初であると同時に、投資期間中の半分以上)投資した資産が投資額よりマイナスの状況であることを受け入れ、それでも長期的視点で投資を続けることが必要で、この痛みのことを「罰金ではなく入場料なのだ」と表現していたことが、とても印象的だった。
とても良い表現だったので、「入場料」という表現を引用させてもらった。
あなたがCxOキャリアを歩もうと思うなら、修羅場(もしくは停滞期)は必要な入場料であり、罰金ではない。
その入場料を払い続けながらも、修羅場を直視し、粛々と闘い続け、乗り越えた(もしくは耐え抜いた)人だけが、修羅場の渦中でリーダーシップを指揮するCxOに相応しい人材と認められるようになるのだ。