2024/08/03
空前のスタートアップブーム
スタートアップの資金環境は戦後最大の成長を成し遂げ、これまででは想像できなかったほど大企業→スタートアップへの転職は活況となった。
INITIAL調べ、国内スタートアップ資金調達と社数によると、この10年間でスタートアップへの資金流入は1000億未満→1兆円弱と約10倍にまで拡大した。
しかしながら、スタートアップで働くことは、どういう事か?ということへの認識はバラつきが多く、場合によっては「こんなはずじゃなかった」という後悔を招いているように感じる。
今回は、私なりの「スタートアップで働くということは?」について意見を述べたいと思う。
世界でトップ10に入る会社を、これから30年で作ろうと言われたら、どう思うか?
「面白そうですね!?何か策があるんですか?」と目をキラキラさせるのか?
「そんなこと出来るのかよ?」と腕を組み懐疑的な姿勢で耳を傾けるのか?
当たり前だけど前者のスタンスがスタートアップで働くには向いている。
もちろん、世界で5本指に入る会社を30年で作れる可能性は限りなく難しい。
しかし、0%ではない。
いや、むしろそういう会社を作るにはスタートアップの方が向いているというのが正しい考察だ。
3-4か月くらい前のデータで恐縮だが、自分で集計した限りでは、事実として世界の時価総額トップ10のうち、5社が創業30年以内、7社が50年以内である。
社名 | 時価総額 USD | 創業年 | 経過年 | |
1 | アップル | 2兆6,090億 USD | 1976 | 47 |
2 | マイクロソフト | 2兆1,460億 USD | 1975 | 48 |
3 | サウジ・アラビアン・オイル | 1兆8,931億 USD | 1933 | 90 |
4 | アルファベット | 1兆3,302億 USD | 1998 | 25 |
5 | アマゾン・ドットコム | 1兆584億 USD | 1994 | 29 |
6 | エヌビディア | 6,860億 USD | 1993 | 30 |
7 | パークシャー・ハザウェイ | 6,756億 USD | 1839 | 184 |
8 | テスラ | 6,564億 USD | 2003 | 20 |
9 | メタ・プラットフォーム | 5,494億 USD | 2004 | 19 |
10 | ビザ | 4,753億 USD | 1958 | 65 |
この事実が突きつけるメッセージは「創業50年以上の企業が世界のトップを目指すのは非常に困難だ」と言っても過言ではない。
つまり、世界のトップを目指すなら老舗企業よりもスタートアップの方が可能性が高いということだ。
どちらの切り口が自分を突き動かすか?
もちろんこの事実も切り口次第でいかようにでも加工できる。
例えば、創業50年以上(および50年未満)のすべての会社のうち何%がトップ10にランクインできているか? と分母分子を変えたら、創業50年以上の方が率は高いのではないか?と推察できる。
それはそれで事実なのでが、どちらの切り口が自分を突き動かすか?ということが大切なのだ。
「肯定的に見ればAという見方ができる」
が、自分を突き動かすのか?
「否定的に見ればBという見方になってしまう」
が自分を突き動かすのか?
例えば、新製品がほとんど売れなかったとき
例えば、新製品の提案を30社にした時に1社しか受注できず、しかも10社には「なぜ購入しないか論理的に説明された」ときに、どちらの捉え方をするか?などで現れる。
肯定的:1社も発注してくれた
否定的:29社に断られた
肯定的:10社も改善要望をくれたので伸びしろ多い
否定的:10社も論理的にダメ出しされたから売れない
たった1つでも成功事例があるなら、成功要因を分析して(時間はかけずに)、創意工夫して2つめの成功を目指してトライアンドエラーを繰り返すのがスタートアップ的と言える。
逆に29社に断られた理由を整理して、成功しない根拠を論理的に説明することに集中するのはスタートアップ的の真逆で、エラーが出ないことを重視するスタイルで、あえて名づけるなら官僚的と言えるアプローチになる。
官僚的スタイルは、悪いという訳ではなく、エラーを避けるべき組織、それこそ官公庁や、大企業の運用部門、スタートアップでもエラーに対して排他性を求められる管理部門の一部などでは、重要な存在になる。
つまり大切なのは、自分のスタイルに合った居場所を探す、もしくは居場所に相応しいスタイルで行動することが重要になる。
スタートアップとは、崖の上からから飛び降りながら、飛行機をつくるようなものだ
LinkedInの創業者 リード・ホフマンが語った名文句だが、まさに飛び降りながらの状況で、「うまくいかない=墜落する」未来を模索したり力説することに何の意味があるだろうか?というのが、スタートアップで働くうえで重要なスタンスとなる。
一分一秒を無駄にせず、どうやったら大空に羽ばたくエンジンを、翼を、組み立てられるかに全精力を注ぐべきである。
もし1ミリでも、翼が風に乗り、機体が上昇する瞬間があったとするなら、「どうやったらもう1ミリ上昇できるか?」にエネルギーを費やすべきであり、「あれは偶然だ、再び機体が上昇することはない」と語ることに意味は無いのである。
ここで語るような、1%の成功事例をもとに「きっと出来る!」と声高に叫ぶと、賢い大人たちに(しかし自らは何も挑戦していない賢い大人たち)「馬鹿じゃないか!」と言われることがある。ライト兄弟や、ガリレオ・ガリレイたちも、きっとそうであったに違いない。
それを「挑戦者への賞賛だ!」と前向きに捉えて、挑戦している人が増えたら良いなと思って、「挑戦者(ばか)が日本を元気にする=BNG」と名付けたことを付け加えておきたい。