2024/08/03
むかしむかし、ある会社の経営幹部が社長に相談に来ました。
「部下である某課長との人間関係に苦労している。某課長は社長の言うことは聞くのに、上司である自分の言うことには反発ばかりしてくる。このままでは会社全体に悪影響を及ぼすかもしれない。社長からも課長に一言伝えてもらえないでしょうか?」
ところが社長は無下に言い放った。
「断る。お前の仕事だ。自分で解決しろ」
困った経営幹部は、社長と幹部の適切な関係についてアドバイスしてくれると噂の金髪ゴリラに相談をすることにしました。
経営幹部は「社長は優しくない」と、鬱積したストレスのせいか、普段は口にしない不平不満までも口にしてしまった。
すると金髪ゴリラは、経営幹部に問うた。
「社長という仕事は、優しさを競う職務なのですか?」
経営幹部はしばらく考えた。
「いや、確かに優しさを競う職務ではありません。
市場の未来を見据えて、最適と思われる経営判断をする職務です。
しかし同時に、経営幹部を束ねることも職務に含まれており、そのためには優しさや、強さ、畏怖、心配り、真摯さ、誠実さなども求められると思います」
金髪ゴリラは、白髪も混ざり始めた顎髭を撫でながら聞き返しました。
「なるほど。経営幹部を束ねるためには、優しさや強さなどの要素は大切かもしれませんね。とても参考になりました」
経営幹部は、自分がとっさに放った言葉が的を射ていたことに、ほっと胸を撫でおろしました。
金髪ゴリラは、珈琲を一口飲んでから、ゆっくりと口を開きました。
「ところで経営幹部さんとは、どんな職務なのですか?」
「経営幹部とは、社長やトップマネジメントの経営方針を的確に理解し、それを部下に浸透させ、経営方針に基づいた部門計画を策定・推進することです」
「なるほど。経営幹部さんは、部下を束ねる職務は含まれていますか?」
「もちろん。先ほども申し上げましたが、部下に経営方針を理解させ、適切な部門計画を策定・推進するためには、部下を束ねることは欠かせません」
しばし神妙な時間が流れる。経営幹部さんは、自分が発した言葉を振り返って、すでに何かに気づき始めていた。
「もうお気づきでしょうが、経営幹部さんには部下を束ねる職務が含まれてます。
そのためには、必須ではありませんが、優しさや強さ、畏怖や心配り、真摯さや誠実さなどは求められることがあります。
ゆえに社長が仰った『お前の仕事だ』とは、経営幹部さん自身が自らを変えること、それは優しさかもしれませんし、誠実さかもしれません、何かはわかりませんが、それを身に纏うことを怠けてはいけませんよ。という優しいアドバイスなのではないでしょうか?」
と、物語はここまでなのですが、これは先日あるCxOさんのメンタリングでの出来事を、ややモザイクをかけて創作した物語です。
主人公は経営幹部さんとさせていただきましたが、これは経営幹部に限ったハナシではなく、中間管理職にも、パイセンにも、お兄ちゃん・お姉ちゃんにもあてはまることだと言えます。
人間関係の問題における原因を、自分の外、つまり他人に置くと解決が限りなく難しくなります。
なので「自分を変えることで課題を解決するとしたら?」と考えて行動することが大切になります。
もし「解決」というのが難しく感じる場合は、「改善」とか「痛みを和らげる」と置き換えても良いです。
そして、このスキルの習熟度こそが、より多くの部下を束ねる、もしくは多くの階層をつかさどる立場に求められることであり、平たく言えば人の上に立つスキルと呼ばれるものです。
あと、敢えて付け加えるとすれば、人間関係の課題をゼロにすることは不可能だと考えます。
いまだに拗らせた人間関係から戦争は始まってます。
なので、人間関係の問題を感じたとき、不幸と考えるのではなく、生きていくうえで必ず出会うイベントだと思うことも大切です。ずーっと青信号のみで歩き続けることを夢見るのは、ちょっとドリームすぎるということです。