2024/08/03
グーグルのラリーペイジさん、ソフトバンクの孫さん、ユニクロ柳井さん・・・
どんなに小さいベンチャー企業だったとしても、企業経営は戦争であり、これらの剛腕経営者が率いる有名企業とも対決をしなければならない。
していないつもりでも、同じ戦場にいるのは事実である。なので、ベンチャー企業は大企業が目を付けないニッチ市場を見つけ出し、経営資源を集中して市場を獲得していく。繰り返しになるが経営は戦争なのである。
突出した戦闘力を誇るのが創業者だ
多くの創業者は何もないところから、あるとすれば意志だけのところから、資金(リスクマネー)をかき集めたり、最初の仲間を探したり、最初の顧客をつくったり。とにかく何もないところからでも勝てる戦闘力で、組織を作り上げていった人物に違いない。
その過程で、自らより優秀な情報収集責任者や、戦略責任者、戦闘責任者、武器製造責任者、兵糧管理責任者などの経営幹部を採用したり、育成したりして、さらに組織を大きくしている。
このとき、幹部もやはり人間なので評価が必要なのだが、成長途上の企業や組織においては(僕個人の見解としては)評価や給与に敏感な人材は幹部にすべきではない。
なぜなら、評価に敏感な幹部は「社長、僕の頑張りをみてください」「僕の成果をみてください」ということへ労力を使うからだ。
百歩譲って、幹部がそこへ労力を使うのは構わないが、社長に労力を使わせてはならない。なぜなら、最も戦闘力が高い創業社長が社内(後ろ)を見てたら、組織としての対外的な戦闘力は圧倒的に下がるからだ。
理想の台詞としては「後ろの心配はしないで良いから、とにかく社長は前を向いて進んでください」と言えること。そういう人を幹部に選ぶと組織の戦闘力は高くなる。例え優秀な人でも、自分の評価という何も生産しないことをさせるために、社長に後ろを向かせるのは幹部失格だと思う。
実際、これまでの経験上「社長、僕の頑張りを見てください」という幹部は、ほとんど害しかなかった。
コンサルファーム出身の頭脳明晰なAさんの話
名門高校を経て、一流大学を卒業し、有名コンサルファームに就職した。のちに、僕が務めていたベンチャー企業の幹部として参画してきた。頭脳明晰だが、とにかく評価に過敏だった。
どうしたら役員になれるのか、どうしたら給与があがるのか、どうしたら認められるのか。よく社長にお願いをして個別面談をしていた。
いまらな彼のような人は幹部にはしない。機能型部長として活躍してもらう。
当時の僕は甘かった。
結果的に、根負けしたお人好し社長は彼を執行役員にすることにした。(僕も了承したので同罪であることを付け加えておく)
結果として、良いことはなかった。
正論だけで解決策がなく、多くのメンバーからも信頼されていなかった。勝てない理由だけは素晴らしいロジックで構築できるが、勝てる戦略は構築できない。たまに勝てる方法を考え出すが、「始めてみたら予測と違ったので厳しい」と簡単に言い出す。そして、失敗して評価が下がることを恐れるのでイノベーションは起きない。評価が下がらないように、成果が出ないロジックを固めて、社内への宣伝活動まで始める。
以後、僕は幹部に「頑張っているか、頑張っていないかなんてどうでも良い」と先に言うようにしている。結果的に頑張った時に労いの言葉をかけることはあるが、事前に指示として「頑張ること」を要求することはない。
コンサルファーム出身のBさんは優秀な幹部だった
同じくBさんもコンサルファーム出身の頭脳明晰で優秀な方でした。彼はとにかく評価や給与よりも、社会への貢献やインパクトを考えるタイプで、Aさんとは正反対のタイプでした。
今だからこそ言える笑い話だが、中途入社して一週間してから給与の話を初めてした。当時26歳くらいのBさんはコンサルファームで800万円以上の年収があった。
僕「そういえば、Bさんの給与決めてなかったね」
B「え?ベンチャーに飛び込んだんだから、月給20万円が相場だと思ってましたよ」
僕「新卒じゃないんだから、甘えないでくれよ。給与はしっかり払うから、高い成果を出してほしい。よし30万円だそう!」
彼とは今でもこの思い出話で盛り上がる。
30万円は、当時の僕にとっても、彼にとっても高額だったのです。創業COOの僕の月給が45万円だったと思います。
「いま思うと、30万円ってドヤ顔で言って自分が笑えるわぁ」とよく飲みながら話します。
Bさんは2年後には年収1000万円くらいになって、今では某ベンチャー企業の創業社長として、十分な報酬を獲得しているはずです。彼はとにかく優秀でした。
いまでも幹部候補の人に言われることがある。
「僕が頑張ってるの知らないじゃないですか!」
「僕の頑張りは評価に値しないのですね」
こういうとき、僕は冷酷に思う。
「この人は幹部に向いてない、機能型部長以上に昇格させるのは止めよう」と。