Moon Creative Lab Inc.
三井物産グループ45,000人を超える全世界の組織や社員からアイデアを集め、新しいビジネスを創造するイノベーションラボ。シリコンバレーパロアルトに本社を置き、ビジネスをゼロから具現化するための機能と環境を提供している。エンジニアやデザイナーなどの多様な専門性を内製化し、ビジネスデザインのプロフェッショナル集団として成長すべく、挑戦を続けている。
新しいビジネス、組織、ポジションの創造。Moonが描く「人の三井」と日本のこれから。
三井物産が「長期業態ビジョン2030」の中で示した、「つなぐ」から「つくる」へというビジョンのもと、先陣を切る組織として生まれたMoon Creative Lab Inc.(以下、Moon)。
本社シリコンバレーでの採用と同時に、日本でのプロフェッショナル人材採用にも注力している。
Moonが目指す組織、そしてそのために必要な人材とは。
President 兼 CEO 横山 賀一氏と、立ち上げ期に採用を担当したProgram Designer 杉本 瞭氏に話を伺った。
Moonが人材に投資する理由
横山:Moonは、三井物産が新しいビジネスを「つくる」ためのイノベーションラボとして2018年に設立した会社です。
三井物産という会社はかつて日本のスタートアップのエコシステムのような役割を担っていました。
シリコンバレーの強靭なVCネットワークやスタンフォード大学に見られるような起業家育成の包括的な仕組みのように、
会社が人を育て挑戦と創造の企業文化のもとで新規事業をどんどん生み出していく。
「人の三井」と言われ、そこが強い会社だったんです。
ところが、時代の変化とともに会社の業態も変わってきました。
貿易から事業投資型へシフトしていく一方で、2000年代初頭の資源価格高騰に端を発し、M&Aを中心に組織は成長を続けました。
その過程で自ら事業を立ち上げる機会が著しく減少し、マイナー投資先も格段に増え、事業経営よりも出資先事業をモニタリングする投資家の様な仕事が増えていったんです。
会社としても投資ができる人材を育成・採用してきましたし、それによって新たな収益の柱を手に入れる成功事例も出てきたため、それはそれで良い戦略だったと思います。
しかし、これからの時代に、三井物産はさらなる成長への挑戦が必要ではないか。
人を軸に、人の三井として、もう一度自分たちでビジネスをつくる事もできる会社になるべきではないか。
そんな課題感が生まれてきたんです。
そうした経緯もあり、三井物産の将来に向けた羅針盤となる「長期業態ビジョン2030」が作成されました。
そこでうたわれた「つなぐ」から「つくる」へというビジョンのもと、Moonは三井物産が0→1でビジネスを創るために、機能と環境を提供する会社として設立されました。
当然Moonの人材は、0→1で事業を作る経験が豊富であることが前提になります。
そこで、人材の宝庫で流動性も高い、シリコンバレーに本社を置き、採用をはじめました。
また、日本やアジア市場向けのプロジェクトも多い中で、日本でも採用を強化しています。
日本採用でぶつかった「壁」とは
横山:しかし実際に、日本で採用を進めようとした当初は、壁にぶつかりました。
弊社では、 Design Researcher 、Communication Designer といったポジションの採用に注力していますが、日本ではそのタイトルで募集しても、そもそもいないんですよ。
日本にある職種って、すごく定型のものを作り上げている。
結局シリコンバレーに行かないと、0→1経験豊富で多岐にわたる専門性を追求したデザイナーがいないというのも、我々としては悲しい話です。
蔵元:たしかに、Design Researcherのような、ポジションとして確立していない人をどう採用するかという課題は、近年人材業界で出てきています。
でも、個人的には楽観的に見ています。
例えば、COOという単語も、2000年頃に出現したポジションで、当初は確立してない職種でした。
しかし、少しずつ成功事例が世に出ることにより、2005~2010年くらいには、多くの人材がキャッチアップできるようになりました。
先行する立場としての苦労はあるかもしれませんが、まずは御社が成功事例になること。
そして私たちは成功するまでサポートし続けることで、一緒に日本の人材市場に変革を起こしていきたいですね。
横山:我々の事業は、三井物産の社内の人でも理解が難しいと思うんです。
これまでのやり方や成功体験がある中で、「これからはこうです」と言ったところで、なかなか受け入れるのは難しいんですよ。
ですから、若い層やこれから入社する人たちがMoonを見て、「三井物産に行けばこんなことができるんだ」と思ってもらえたらいいですね。
実際に学生からの問い合わせは増えていますし、社内の若い層も非常に興味を持ってくれていると思います。
BNGパートナーズとの仕事
杉本:我々が採用をはじめた頃は、三井物産から来た少数の商社パーソンしかいなかったので、わからないことが多かったです。
デザイナーやエンジニアのジョブディスクリプションなんて、書いたことがなかったので。
そんなとき、社外の テックアドバイザーに頼み込んだところ「BNGパートナーズの岡本さんという、私の懐刀を紹介するよ」と、ご紹介いただいたんです。
BNGパートナーズは、我々が言語化できていない部分をしっかりと理解していただき、そのうえで候補者を提案してくださった。
すごく頼りになるなというのが、最初の印象でした。
他にもかなりの数のエージェントさんに会って話をしたんですが、
人材会社の人もDesign Researcherなどが何か良くわからないし、データベースに入れてもヒットしないですからね。
でもBNGパートナーズは、想像力を働かせて「こういうことじゃないですか」、「日本だったらこういう業界のこういう人はどうですか」と、
丁寧にイメージを摺り合わせてくれて、少しずつ日本における採用像ができていったのはすごく助かりました。
岡本:ありがとうございます。
Moonさんが候補者に一番どんなことを期待しているのか、採用成功の定義はどういうものかというのを、とにかく細かく聞きましたね。
擦り合わせができたことで、私もようやく候補者像が見えてきました。
とはいえ、デザイナー経験があり、英語が話せる、プロダクトをBtoCで見ているなど、候補者の要件は高かったですね。
でも、絶対にドンピシャの方をご紹介しようと思っていました。
結局は最初に依頼されたポジションではない方を、採用していただきましたね。
杉本:そうですね、Data Scientistの方に入社していただきました。
これまでずっと日本の最前線でデータを触ってきた方ですが、本人の希望もあり、現在は、プロジェクトのマネージャーのような形でチームを牽引し、
ビジネスをつくる仕事をしてもらっています。
いろいろなチームが彼を巻き込みたいと社内で引っ張りだこで、彼の取り合いが毎日勃発しているんですよ。
喧嘩にならないように調整するのが、僕の仕事ですね(笑)。
これからもどんどん採用していきますし、BNGパートナーズには助けていただきたいことがたくさんあります。
我々も2年前と比べるとだいぶ進化していると思っているんですが、日本の市場だとやはり相当探しに行かないと、まだまだ人材にリーチできないんです。
様々なプロ人材のコミュニティにアクセスしたり、転職潜在層の方にアプローチしたりというのは、我々だけでは限界があります。
BNGパートナーズの蓄積されたネットワークをもって、阿吽の呼吸で助けていただけるとありがたいです。
今後の展望
横山:我々がこれから目指すのは、平易な言葉で言うならば「ダイバーシティ」。形だけのものではなく、本気のダイバーシティです
社内には、国籍や性別の違いに限らず、様々な専門性やバックグラウンドを持った人が集まっています。職種の多様性も持たせています。
また、アメリカと日本では、マネジメントの前提も違います。
成果主義のもとで明確に測定可能なKPI達成を追求するアメリカの上司の下で、日本の労基法のもと、時間で管理されている部下が働いていたりもする。
コミュニケーションの難しさも感じます。
でも、そういう違いを超え、この組織で何が起こせるのか。我々は実証しなくてはなりません。
まだまだ手探りですし、うまくいかない可能性もあります。でも、うまくいったときには、それを人様に広くお話できるようになりたいですね。
同類の人が集まるのではなく、違う人が来る。違う人ばかりが集まるというのが、採用のビックターゲットです。
蔵元:我々としても、御社のように実践されている会社の情報をどんどん発信していきたいと思います。
そういう働き方、考え方があるんだということを、日本でもっと広げていきたいですね。
横山:我々も「日本を元気にする」という志で新しいビジネスを立ち上げようとしているので、
BNGパートナーズが掲げている「馬鹿が日本を元気にする」というポリシーには共感します。
三井物産の「物産」は「物ヲ産ス(産業を興す)」という意味を持っていて、
社員が新しい未来をつくる、新しい事業や産業を興すんだという「つくる」DNAがすり込まれている会社です。
だからこそ、我々の手で成功事例を作っていきたい。
成功してはじめて、「日本ももっと頑張りましょうよ」と、示していけるんじゃないかと思います。
BNGパートナーズには、今後も一緒に盛り上げていただきたいです。